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企業のリスキリングにeラーニングは有効!導入の進め方5ステップ

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「経営陣からリスキリングに取り組むよう言われたものの、適切な方法が分からない」
「eラーニングが良いと聞くけれど、リスキリングを進めるのに本当に効果があるのだろうか?」

リスキリングに取り組みたいとお考えの人事担当者様の中には、このような疑問やお悩みを抱えていらっしゃる方も多いのではないでしょうか。リスキリングを実践するためのツールとして、手軽に導入できて、場所や時間を選ばず様々な学習コンテンツを提供できるeラーニングは、魅力的に映るかもしれません。

結論からお伝えすると、eラーニングは企業においてリスキリングを推進するうえで非常に有効なツールです。
ただし、単に社員がeラーニングを利用できる環境をつくるだけでは、客観的に説明できる成果が得られることはほとんどありません。

リスキリングの当事者である社員に対し、正しい方向に動機付けをしないと、学習がなかなか進まないケースが多いのが実状です。
そのため、「ゴールを設計したうえで、社員が着実に学びを進められるように運用すること」が、eラーニングを活用したリスキリング成功の鍵となります。

「2章:リスキリングでeラーニングを導入する前に押さえるべき重要な3つのポイント」にて、年間約3,400社の人材育成を支援しているグロービスが考える、eラーニングを使ったリスキリング施策の要点を詳しくお伝えしています。

eラーニングを活用したリスキリングの進め方や、実際にeラーニングを導入してリスキリングを推進された企業様の事例も紹介しているので、導入を検討するうえでぜひ参考にしてみてください。

目次

1.【結論】企業のリスキリングにeラーニングは有効!おすすめできる7つの理由
1-1. 幅広い社員に対し、各人の必要なスキルに合わせて学習コン
1-2. 個々の社員の習熟度に合わせ、反復視聴や必要箇所のみ視聴など柔軟な使い方ができる
1-3. トレンドや環境の変化に合わせた最新の知識やスキルを学べる
1-4. 場所や時間に制約がある社員にも機会提供ができる
1-5. 社員の自主学習を促すことで、自律型人材の育成にもつながる
1-6. 社員の学習進捗をデータで管理できる
1-7. 他の手法と比べて費用や人的リソースを最小限に抑えられる

2. リスキリングでeラーニングを導入する前に押さえるべき重要な3つのポイント
2-1. リスキリングの「目的」と「ゴール」を明確にしたうえで、eラーニングが最適なのか見極める
2-2. eラーニングだけではインプットに偏るため、他の学習方法との組み合わせも検討する
2-3. 運用を工夫して「社員の動機付け」を行い、主体的な学習を促すことが必要

3. 企業のリスキリングでeラーニングを導入する際によくある失敗
3-1. eラーニングの導入自体がゴールになり、表面的な取り組みに終わってしまう
3-2. 現場の管理職がリスキリング推進を人事部に丸投げし、協力を得られない
3-3. 社員の日常業務の負担が大きく、学習時間を捻出できない
3-4. 体系的なカリキュラムを設計できておらず、知識やスキルが定着しない
3-5. 社員個人の自主性に委ねてしまい、学習が進まない
3-6. 学習成果が評価や配置に反映されず、社員のモチベーションが低下してしまう
3-7. アウトプットの機会がなく、実践的なスキルが身に付かない

4. eラーニングを活用して企業のリスキリングを成功させる6ステップ
4-1. STEP1:外部環境と自社の現状を分析し、リスキリングの目的を明確にする
4-2. STEP2:自社の課題に合わせて必要なスキルセットを定義し、ゴールを設定する
4-3. STEP3:対象者を選定し、本人および上長にリスキリングの必要性を共有する
4-4. STEP4:eラーニングのコンテンツを組み込んだカリキュラムを設計し、実施する
4-5. STEP5:対象社員の主体的な学習を支援する
4-6. STEP6:学習データを可視化し、学びの成果を人事評価や人材配置に反映させる

5. リスキリングの成果を最大化するにはeラーニング学習に加えて「アウトプットの機会」が必要

6. eラーニングを活用して社員のリスキリングを推進した企業の事例
6-1. 八千代エンジニヤリング株式会社様
6-2. 株式会社八十二銀行様
6-3. 味の素株式会社様

7. 体系的な学びを通してリスキリングを推進できるeラーニングサービス「グロービス学び放題」
7-1. 各分野の学ぶべき内容が体系的に整理されており、効率良くリスキリングを進められる
7-2. 全16カテゴリを用意しており、幅広い職種や階層のリスキリングに対応できる
7-3. DX推進、AI活用などの最新テーマにも対応、環境の変化に合わせて学びをアップデートし続けられる

8. まとめ

1.【結論】企業のリスキリングにeラーニングは有効!おすすめできる7つの理由

結論からお伝えすると、eラーニングは企業が社員のリスキリングを推進するうえで非常に有効な手段です。
リスキリングにeラーニングの導入が効果的であると言えるのには、具体的に以下の7つの理由があります。

観点具体的なメリット
個別最適化・柔軟性⚫︎幅広い社員に対し、各人の必要なスキルに合わせて学習コンテンツを提供できる
⚫︎個々の社員の習熟度に合わせ、反復視聴や必要箇所のみ視聴など柔軟な使い方ができる
学習機会の拡充⚫︎トレンドや環境の変化に合わせた最新の知識やスキルを学べる
⚫︎場所や時間に制約がある社員にも機会提供ができる
⚫︎社員の自主学習を促すことで、自律型人材の育成にもつながる
運用の効率性⚫︎社員の学習進捗をデータで管理できる
⚫︎他の手法と比べて費用や人的リソースを最小限に抑えられる

1-1. 幅広い社員に対し、各人の必要なスキルに合わせて学習コンテンツを提供できる

eラーニングは豊富な学習コンテンツが用意されており、幅広い分野の学習に対応できるため、多様な職種の社員を抱える企業のリスキリングに適したツールです。

例えば集合研修では、受講者全員が同じ内容を学ぶ必要があるため、社員一人ひとりの学習ニーズや必要スキルに合わせて多数の研修を企画するとなると、かなりのコストがかかります。

一方、サービス上で豊富なコンテンツから自由に選んで視聴できるeラーニングなら、職種や目指すキャリアに適した学習内容を選択できます。例えば、全社でDXを推進したいケースにおいても、営業職の社員は主にビジネスデータ分析について学び、事務職の社員はRPA(Robotic Process Automation)について学ぶなど、細かいニーズに合わせた対応が可能です。

1-2. 個々の社員の習熟度に合わせ、反復視聴や必要箇所のみ視聴など柔軟な使い方ができる

一人ひとりが自分のペースで学習を進められるため、知識の定着度を高めやすいという点で、特に全社的なリスキリング推進においてeラーニングは使い勝手が良いツールです。

一斉に講義を行う集合研修では、参加者一人ひとりの理解度に完璧に合わせて進めることは難しく、個人の知識量や理解スピードによっては学習の成果に差が出る可能性があります。

一方、eラーニングは理解が浅いコンテンツを繰り返し視聴したり、既知の情報が多いコンテンツは必要な箇所だけ視聴したりするなど、自分のペースで学べます。

1-3. トレンドや環境の変化に合わせた最新の知識やスキルを学べる

ビジネス環境の変化やトレンドに対応した最新の学習コンテンツを提供できる点も、eラーニングがリスキリングに向いている理由の一つです。

企業におけるリスキリングは、従来必要とされていた知識やスキルだけでは不十分だという課題意識から始まり、最新の潮流に合わせた学び直しを行いたいケースが多いのではないでしょうか。

テーマに精通した外部企業が主催する公開研修に参加する方法もありますが、全社的に知識やスキルを底上げしたい場合は、対象人数が多くなり、受講料が嵩みます。一方eラーニングサービスであれば、AI活用やDXといった最新の潮流が反映されたコンテンツをタイムリーに視聴でき、一人当たりのコストも抑えられます。

ただしeラーニングサービスの選定において更新性の高さが担保されているサービスを選ぶことが重要です。


グロービスのeラーニングサービス「グロービス学び放題」では、ビジネスの現場や戦略策定におけるAI活用について学べるシリーズの提供を開始しました。
主にリーダー・マネージャー層を対象として、AIのマネジメント活用・組織活用について学ぶ「AI BUSINESS SHIFT」、AIの基礎理解や実務における活用方法を学ぶ「AI WORK SHIFT」に分かれています。

▼関連コラム:
マネジメントと現場、2つの視点で進めるAI活用「AI BUSINESS SHIFT」「AI WORK SHIFT」シリーズ


1-4. 場所や時間に制約がある社員にも機会提供ができる

勤務地や働き方を問わず、全社員に公平な学習機会を提供できる点で、eラーニングの導入は強くおすすめできます。

特定の場所や時間にて実施する必要がある集合研修においては、勤務地が離れている社員や、時短・シフト勤務など勤務形態が異なる社員の参加調整が大きな課題となります。

いつでもどこでも学習に取り組めるeラーニングなら、こうした物理的な制約を取り払い、幅広い社員に等しくリスキリングの機会を提供できるため、全社的なスキルの底上げを目指すことが可能です。

1-5. 社員の自主学習を促すことで、自律型人材の育成にもつながる

社員の学習へのモチベーションを引き出し、自律的に学ぶ人材を育成するきっかけになるという点も、eラーニングをおすすめする大きな理由です。

講師のファシリテーション主体で進む研修と異なり、eラーニングは社員が主体的に学習計画を立て、個人で学習を進めることになります。そのため、社員のモチベーションを上げ、学習を促すための運用を設計しなければなりません。この働きかけが成功すれば、与えられた研修に参加する受動的な姿勢から、自ら学ぶ姿勢への転換を促すことができます。

「対象社員が新たな知識やスキルの習得の必要性を理解し、前向きかつ主体的に学習に取り組めているかどうか」がリスキリング成功の分かれ道になるため、社員が自律的に学ぶ風土を醸成することは極めて重要です。

【eラーニングを活用して自律的に学ぶ人材を育成した事例】

<お客様の声>
東京海上日動火災保険 菊地様:

新たな研修プログラム「学びのカフェテリア」のコンセプトはまさに「自ら決める」です。やらないことも含めて、自分で決める。会社は学ぶ環境を整え、社員に自由と責任を提供します。

「学びのカフェテリア」のパッケージプログラムは、単なる研修ではなく現場でのOJTを軸に設計しています。現場で出てきた課題を解決する手段の一つとして、「グロービス学び放題」で良質なインプットを手軽に行い、そこで学んだことを実践で試してみる。「学習」と「経験」を行き来するのにピッタリです。

もともとは100人程度の利用者数でしたが、パッケージプログラムに「グロービス学び放題」のコンテンツを組み込んだことで、任意で学習する人が増えました。「学びのカフェテリア」を開始してからまだ1年経っていませんが、延べ1,000人が利用しています。

▼インタビュー全文:
社員の発意をベースにした学びのプラットフォームで自分自身に問いを立てられる人材開発を 東京海上日動火災保険が取り組む「学びのカフェテリア」とは

1-6. 社員の学習進捗をデータで管理できる

各社員の学習進捗をデータで可視化し、計画的な人材育成に活かせる点が、戦略的なリスキリング推進においてeラーニングをおすすめする理由の一つです。

集合研修の効果測定は、事後のアンケートなど定性的な評価に留まりがちです。一方、多くのeラーニングには学習管理機能が搭載されており、誰がどのコースをどれくらい視聴したかを客観的なデータで一元管理できます。これにより、リスキリングの進捗を正確に把握し、データを活かした個別フォローや育成計画につなげられます。

更に、LMS(学習管理システム)と連携すると、様々な形態での研修を含め、包括的に社員の学習・育成状況を管理することも可能です。

▼関連コラム:
LMS(学習管理システム)とは?メリットや導入のポイントを徹底解説

1-7. 他の手法と比べて費用や人的リソースを最小限に抑えられる

eラーニングは他の育成手法に比べ、費用や人的リソースを抑えて導入・運用できる点も魅力です。

研修の種類費用相場
eラーニング1人あたり:1万円~(導入費用・カスタマイズ費用がかかるケースあり)
スクール通学1科目あたり:10万円~(別途入学金がかかるケースあり)
集合研修(講師派遣)1日あたり:数十万円~

集合研修の場合、会場費や参加者の交通費、講師料といったコストがかかります。一度に参加できる人数にも限りがあるため、対象社員が多いとかなり費用負担が大きいです。

また、研修の企画や日程調整、出欠管理といった人事部門の運営工数も必要であり、定常業務で忙しい中に追加で研修を企画するのが難しいケースもあるでしょう。

eラーニングは一人あたりのコストが低く、運用においても集合研修ほどの人的リソースを必要としないので、負荷を最小限にして導入を進められます。

▼関連コラム:
社員研修の費用相場はいくら?予算内で最大限の効果を生むコツを解説

2. リスキリングでeラーニングを導入する前に押さえるべき重要な3つのポイント

ここまでリスキリング推進におけるeラーニングの利点をお伝えしましたが、導入までの手軽さやコストの低さ、ツールの長所だけを見て、安易に導入するのはおすすめできません。リスキリングの目的や企業の環境によっては、必ずしもeラーニングが向いているわけではないからです。

eラーニングの導入を決める前に、押さえておきたい3つのポイントをお伝えします。



2-1. リスキリングの「目的」と「ゴール」を明確にしたうえで、eラーニングが最適なのか見極める

eラーニングによるリスキリングを成功させるうえで最も重要なのは「どの方法を選ぶか」ではなく「目的の明確化」と「ゴールの設計」です。まずこの2点を言語化したうえで、eラーニングによって成果を出せそうなのか、そもそも自社にとってeラーニングが適切な方法なのかを見極めましょう。

①目的を明確にし、ゴールを設計する

「なぜ自社にリスキリングが必要なのか」(=目的)を明確にしたうえで、「どのような状態を実現できたら成功とみなすか」(=ゴール)を設計しましょう。最初の設計ができていないと、いつの間にか手段が目的化し、eラーニングを導入したところで取り組みが終わってしまうケースが多いです。比較的コストが低いeラーニングといえど、成果が得られない無駄な投資に終わってしまいかねません。

<目的とゴールの設定例>

目的⚫︎全社員のDXスキルを底上げし、生産性向上と業務変革の文化を醸成したい
ゴール⚫︎全社員がDXを「自分ごと」として捉え、日々の業務の中で「この作業はデジタルで効率化できないか?」と考えられている状態
⚫︎生成AIなどの新しい技術に対する心理的なハードルが下がり、失敗を恐れずに試してみる文化が醸成され始めている状態
定量的な目標⚫︎eラーニングの「DXリテラシー基礎」コース受講後の理解度テストで、全社員の85%が80点以上を取得する

②eラーニングが最適な方法なのか比較検討する

eラーニングはあくまで選択肢の一つであり、目的とゴールによっては他の手法のほうが効果的なケースもあります。例えば、全社的に知識やスキルの底上げを行いたいわけではなく、選抜メンバーのスキルを上げたい場合であれば、一人当たりのコストは高いものの、学びの質が高い外部研修に派遣したほうが成果を上げられる可能性が高いです。

グロービスとしては、学習のプラットフォームとしてeラーニングをベースに置き、必要に応じて集合研修や外部スクールへの派遣を組み合わせる方法を最もおすすめしています。他の学習方法の特長は、次の項でeラーニングと比較しながら詳しく解説します。

2-2. eラーニングだけではインプットに偏るため、他の学習方法との組み合わせも検討する

リスキリング目的でeラーニングを導入する際に考慮しなければならないのは、「eラーニングだけでは実践的なスキルが身に付きにくい」という点です。eラーニングはインプットにおいて特に大きな効果を発揮するツールなので、アウトプットを鍛える他の方法とも組み合わせながら、リスキリングを推進することをおすすめします。

リスキリングの最終的な目的が、「社員に知識やスキルを新しく習得してもらい、人材配置や業務アサインに活かすこと」であるケースは多いかと思います。新しく身に付けたスキルを活かして社員が業務で成果を出せるようになるためには、ただインプット型の学習をして終わるだけではなく、実務への落とし込みまで設計するのが理想です。

eラーニングとその他の学習方法のメリット・デメリットを以下の通り比較しました。自社の目的に最も適した方法はどれか、複数の方法を組み合わせることで効果を最大化できないか、一度検討してみてください。

<eラーニングとその他の学習方法の比較>

方法メリットデメリット適したシチュエーション
eラーニング⚫︎幅広い領域の学習コンテンツを提供できる
⚫︎進捗管理や受講データ分析がしやすい
⚫︎一人当たりのコストが低い
⚫︎実践的なスキルまでは身に付きにくい
⚫︎対象者のモチベーション維持が難しい
⚫︎対象人数が多い
⚫︎全社的に知識やリテラシーを底上げしたい
集合研修⚫︎適度な緊張感がある環境で集中して学べる
⚫︎ワークや議論によるアウトプットを通して学習が定着する
⚫︎参加者からの気づきや刺激が得られる
⚫︎一度に学びを提供できる人数が限られる
⚫︎講師料、会場費、交通費などのコストがかかる
⚫︎特定の選抜メンバーの育成に集中投資したい
⚫︎実践が重要なスキルを身に付けさせたい
外部の公開研修・セミナー⚫︎他社との交流による刺激やつながり、気づきが得られる
⚫︎最新のトレンドや知見に触れられる
⚫︎研修の運営工数がかからない
⚫︎対象者個人の学習に留まり、社内の共有知になりにくい
⚫︎受講費、交通費などのコストが高い
⚫︎キーパーソンとなる人材の視野を広げたい
社内勉強会⚫︎社員の主体性を伸ばせる
⚫︎コストが低い
⚫︎社内に精通した人材がいないと実現できない
⚫︎通常業務との両立が難しい
⚫︎対象テーマに精通した社員がいる
OJT⚫︎業務に直結するスキルを身に付けやすい
⚫︎コストが低い
⚫︎指導者のスキルや熱量で学びの質にばらつきがある
⚫︎指導者の業務負荷が高い
⚫︎既存組織の枠組みのまま、人材配置の最適化を行いたい
資格取得支援⚫︎知識やスキルを客観的に証明できる⚫︎資格取得が目的化しやすい
⚫︎必ずしも実務能力と直結しない
⚫︎特定の専門職のスキルレベルを客観的に担保したい

▼関連コラム:
リスキリング研修とは?カリキュラム例と3つの方法・実施するステップ

2-3. 運用を工夫して「社員の動機付け」を行い、主体的な学習を促す

eラーニングを導入した後は、社員本人に任せるだけではなく、いかに運用を工夫して「社員の動機付け」を行うかも重要な成功のポイントです。
残念ながら、導入のアナウンスをするだけでは、多数の社員が自ら学んでくれることはありません。当事者であるリスキリングの対象社員が新たな知識やスキルの習得を前向きに捉えられるよう、育成担当者から働きかけ、主体的に学習している状態をつくることが成功のポイントです。

<受講促進施策の例>

アプローチの方向性施策例
学ぶ必要性を認識してもらう⚫︎実務との関連性が高いおすすめコースを紹介する
⚫︎アセスメント・テストの受講を促し、知識レベルを可視化させる
⚫︎他の社員の学習傾向や進捗を共有する
⚫︎学びが進んでいる受講者へインタビューして共有する
興味のあるコースを見つけてもらう⚫︎職種や階層に合わせたおすすめコースを紹介する
スキマ時間を活用してもらう⚫︎視聴時間の短いおすすめコースを発信する
⚫︎学習ペースを定期的にリマインドする
学習による成長を実感してもらう⚫︎コメント機能などを用いたアウトプットを推奨する
⚫︎社内で座談会や勉強会を開催する
⚫︎視聴コースからの学びを実務での活用に結び付けるレポートを課す

グロービスでは、企業様のご状況に合わせた受講促進のご提案を行っています。「自社の社員が積極的に学んでくれるイメージが湧かない」という人事担当者の方も、ぜひお気軽にご相談ください。

3. 企業のリスキリングでeラーニングを導入する際によくある失敗

eラーニングは性質を理解し、正しい方法で運用すれば、非常に効果的です。
しかし、「導入すれば自ずと社員のリスキリングが進む」というような魔法のツールではありません。手軽に導入できてしまう分、多くの企業が陥ってしまう失敗パターンが存在します。

安易に採り入れる前に、失敗しやすいポイントを把握し、効果的な運用方法のイメージを描いておくことが大切です。

リスキリングを目的としてeラーニングを導入するときによくある失敗のパターンを紹介します。運用を設計する際の参考にしてみてください。

課題の種類原因失敗の具体例
推進体制(マネジメント)目的の形骸化
組織内での責任所在の不明確さ
⚫︎eラーニングの導入自体がゴールになり、表面的な取り組みに終わってしまう
⚫︎現場の管理職がリスキリング推進を人事部に丸投げし、協力を得られない
学習環境仕組みや環境の整備が不十分⚫︎社員の日常業務の負担が大きく、学習時間を捻出できない
⚫︎体系的なカリキュラムを設計できておらず、知識やスキルが定着しない
個人の学習動機・活用動機付けの失敗
実務活用への接続が不十分
⚫︎社員個人の自主性に委ねてしまい、学習が進まない
⚫︎学習成果が評価や配置に反映されず、社員のモチベーションが低下してしまう
⚫︎アウトプットの機会がなく、実践的なスキルが身に付かない

3-1. eラーニングの導入自体がゴールになり、表面的な取り組みに終わってしまう

非常によくある失敗の一つは、eラーニングの導入という手段が目的化し、実際に社員のスキルアップが実現できているかどうかが曖昧になってしまうことです。

最初にゴール設定を明確にしていないと、eラーニングの導入が完了した時点で満足してしまったり、知識やスキルの定着度合いが測れない指標ばかりを追って、本当に達成したい目的からずれてしまったりすることがあります。

例えば、「全社でDX人材を育成したい」というリスキリングの目的があったにもかかわらず、「全社員のログイン率○%達成」「平均視聴時間○時間以上」といった行動目標だけを気にしてしまい、学習内容やその成果を追えていないケースです。一見、定量的な数値で取り組み結果を可視化しているように思えますが、これでは実態としてリスキリングが進んでいるとは言えません。


☑️ 失敗を防ぐポイント

こうした失敗を防ぐには、自社においてどのような人材を育成する必要があるのかを改めて定義し、導入前にゴール設定を行うことが重要です。


▼STEP1:外部環境と自社の現状を分析し、必要な人材要件を整理する
▼STEP2:自社の課題に合わせて必要なスキルセットを定義し、ゴールを設定する

3-2. 現場の管理職がリスキリング推進を人事部に丸投げし、協力を得られない

社員は基本的に目の前の業務で忙しくしており、将来に向けた学習はつい後回しになってしまうことが多いです。このとき、業務をマネジメントしている現場の管理職が自社のリスキリング推進に対して協力的でないと、社員の学習環境が担保されず、リスキリングが思うように進みません。

例えば、人事部門からの学習促進の働きかけについて、管理職が「勉強よりも通常業務を優先するように」「今は忙しいから後でやっておいて」などといったメッセージを社員に伝えてしまうケースがあります。この状況では、社員に学習意欲があったとしても、安定した学習時間の確保は難しいです。


☑️ 失敗を防ぐポイント

リスキリングを成功させるためにも、人事部門だけで独立して施策を考えるのではなく、管理職を巻き込み、部下のリスキリングを自身のミッションとして認識してもらいましょう。


▼STEP3:対象者を選定し、本人および上長にリスキリングの必要性を共有する

3-3. 社員の日常業務の負担が大きく、学習時間を捻出できない

社員の学習環境づくりにおいて、管理職のリスキリングへの理解と協力が重要であるという点は前述のとおりですが、物理的に学習時間の捻出が困難なこともあります。

このケースでは、リスキリングのために新たに確保しなければならない学習時間と、元々抱えている通常業務との調整がされておらず、社員の時間的なキャパシティを超えてしまっていることが多いです。


☑️ 失敗を防ぐポイント

社員個人の努力やタイムマネジメントに任せることなく、企業が主体となり、業務の一環としてリスキリングに取り組みましょう。具体的には、「重要度の低い業務の優先度を下げる」「外注などで業務量を減らすことを検討する」「学習時間を業務として扱う」といった対応が考えられます。


3-4. 体系的なカリキュラムを設計できておらず、知識やスキルが定着しない

習得させたい知識やスキルに対して適切なカリキュラムが設計されておらず、断片的な学び方になってしまうことで、学習内容が定着しないという失敗もよく見られます。リスキリングのように新しい知識を身に付けるときは、基礎から応用へとステップを踏んで学ぶのが定石です。

しかし、ガイドラインとなるカリキュラムが示されていないと、社員はどこからどの順番で着手すれば良いのか分からず学習が進まなかったり、いきなり難しい内容に触れて挫折してしまったりします。

例えばWebマーケティング分野でリスキリングを行いたい場合、「SEO入門」と「広告運用基礎」といった個別の戦術の基礎だけを学んでも、マーケティング戦略の全体像を理解していなければ、実務において場当たり的な考え方しかできません。


☑️ 失敗を防ぐポイント

習得させたいスキルに対応したカリキュラムを設計し、社員に提示することが必要です。


▼STEP4:eラーニングのコンテンツからカリキュラムを設計し、実施する

3-5. 社員個人の自主性に委ねてしまい、学習が進まない

多くの企業において見られる失敗が、学習の進捗管理を社員個人の自主性に委ねてしまい、想定通りに知識やスキルの習得が進まないというものです。

eラーニングのメリットである「いつでもどこでも、自由なタイミングで学習できる」という特長は、「管理者側による学習進捗のコントロールが難しい」というデメリットにもなり得ます。

実際に、eラーニングサービス「グロービス学び放題」を導入されたお客様にも、当初は受講状況の管理を行わない方針で進めていたものの、社員の学習進捗が想定よりも悪かったことから、受講管理指標を導入し、利用促進施策を行う方針に転換したというケースがありました。


☑️ 失敗を防ぐポイント

社員個人の学習意欲に任せきりにせず、企業側から学習へのモチベーションを高め、主体性を引き出す働きかけをしていくことが必要です。


▼STEP5:対象社員の主体的な学習を支援する

3-6. 学習成果が評価や配置に反映されず、社員のモチベーションが低下してしまう

せっかく社員が学習を意欲的に進めたとしても、習得したスキルを人事評価や人材配置に活かす仕組みが整っていないと、社員が学習の意義を見失い、モチベーションが低下してしまうという問題が起こります。

例えば、難易度の高いデータ分析のスキルを習得した社員がいても、それを評価する人事制度や、能力を活かせるプロジェクトへ優先的にアサインする仕組みがなければ、担当業務に何の変化も起こりません。

意欲的な社員も、「頑張ってスキルを身に付けても、この会社では報われない」と感じ、学習を継続するモチベーションを失います。それだけでなく、スキルを正当に評価してくれる他社への転職のきっかけとなるリスクもあります。


☑️ 失敗を防ぐポイント

リスキリングを推進する際には、新たなスキルを習得した後に、人事評価や人材配置にどのように反映するかまで検討しましょう。


▼STEP6:学習データを可視化し、学びの成果を人事評価や人材配置に反映させる

3-7. アウトプットの機会がなく、実践的なスキルが身に付かない

eラーニングは知識のインプットにおいて強みを発揮するツールである一方で、「わかる」から「できる」状態になるには、大きなステップアップが必要です。そのため、得た知識をアウトプットする機会がなく、実務において活用できるレベルまで到達しないことも多くあります。

例えば、eラーニングでデータ分析のコースを受講したものの、学んだ手法を実際の業務データで試す機会や、分析結果を発表する場を設けないケースです。知識が頭に入っても、使わなければすぐに忘れてしまい、「研修は受けたが、実務では全く使えない」という状態に陥ってしまいます。


☑️ 失敗を防ぐポイント

学習内容や自身の業務における活かし方についてレポート提出を課すなど、何らかの形で社員からアウトプットを引き出す機会を設けることが大切です。


▼リスキリングの成果を最大化するにはeラーニング学習に加えて「アウトプットの機会」が必要

グロービスでは、ここまでお伝えしてきたeラーニングの失敗パターンに陥らないよう、導入設計から運用まで丁寧に伴走しています。

4. eラーニングを活用して企業のリスキリングを成功させる6ステップ

企業において社員のリスキリングを推進する一連の流れをご紹介します。

STEP1外部環境と自社の現状を分析し、リスキリングの目的を明確にする
STEP2
自社の課題に合わせて必要なスキルセットを定義し、ゴールを設定する
STEP3対象者を選定し、本人および上長にリスキリングの必要性を共有する
STEP4eラーニングのコンテンツからカリキュラムを設計し、実施する
STEP5対象社員の主体的な学習を支援する
STEP6学習データを可視化し、学びの成果を人事評価や人材配置に反映させる

新しい取り組みを始める際には、eラーニングなどのツールの導入や、新たな研修の企画など、具体的な方法から考えてしまうことが多いです。しかしここまでお伝えしてきたように、成功を左右する最も重要なステップは、取り組みを始める前の「STEP1:目的の明確化」「STEP2:ゴールの設定」です。

それぞれのステップで行うべきことを具体的に解説します。

4-1. STEP1:外部環境と自社の現状を分析し、リスキリングの目的を明確にする

まずは外部環境と自社の現状を分析し、リスキリングによってどのような課題を解決したいのかを明確にしましょう。

このとき、顕在化した分かりやすい課題や世の中のトレンドにすぐに飛びつくのではなく、社内外の状況を客観的に捉えてから答えを出すことが大切です。

以下のチェックポイントに沿って、「外部環境の変化」と、それに対応する「自社の戦略の変化」について考えてみてください。次に、考えた戦略に合わせて、「自社の人材の現状と課題」を洗い出しましょう。

①外部環境の変化

以下のチェックポイントに沿って、自社やステークホルダーに影響する外部環境の変化について考えます。


☑️ チェックポイント

  • 自社を取り巻く外部環境はどのように変化しそうか?
  • 外部環境の変化により、ステークホルダー(顧客や競合他社など)にどのような影響がありそうか?

例:
生成AIの飛躍的な進歩により、ビジネスシーンでの活用が急速に進みつつあります。AI技術を用いて既存サービスの価値向上を図ったり、業務でAIを活用して生産性を向上に取り組んだりする企業が増える中で、従来のやり方を変えないと競争力が低下する可能性がありそうです。

②自社の戦略の変化

①で考えた外部環境の変化を前提として、自社の事業戦略がどう変わっていきそうか考えます。


☑️ チェックポイント

  • 自社の事業や強みはどのように変化していきそうか?
  • 自社の戦略や組織はどのように変化していきそうか?
  • 自社の事業はこのまま成長を続けられそうか?転換が必要か?

例:
変化する環境に対応するため、業務における生成AIの活用を進めて生産性の向上を図る必要性が考えられます。長期的には、定型業務に従事する人数を削減し、人材配置の最適化を行うことも視野に入ってくるかもしれません。

③自社の人材の現状と課題

最後に、②で考えた戦略の変化に伴い、今後必要となる人材と現状とのギャップを考えます。


☑️ チェックポイント

  • 自社の戦略を実現するにはどのような人材が必要か?
  • 自社の戦略を実現するには現状の人材にどのような課題があるのか?

例:
組織としてAI活用を推進し、より人間による付加価値の高い業務にリソースを投入するために、社員一人ひとりのAIリテラシーを高め、正しくAIを活用できる人材を増やす必要があります。

4-2. STEP2:自社の課題に合わせて必要なスキルセットを定義し、ゴールを設定する

STEP1で自社の人材の現状と課題を洗い出し、リスキリングの目的を明確にしたら、次は社員が習得すべき具体的なスキルセットと、客観的に達成度合いが判断できるようなゴールを設定しましょう。これらをもとにカリキュラムを設計することになります。

例えば、「全社員のDXスキルを底上げする」という目的であれば、以下のようにスキルセットを分解・定義します。


  • テクノロジー活用スキル:AI、RPA、クラウドサービスの基礎知識など
  • データ活用スキル:統計学、データ分析、BIツールでの可視化など
  • 変革推進スキル:プロジェクトマネジメント、デザイン思考、ロジカルシンキングなど

そのうえで、各スキルについて「レベル1:用語を理解している」から「レベル3:他者に指導できる」といった習熟度を定義します。そして、今回のリスキリングでは「誰が」「どのスキルを」「どのレベルまで習得するのか」という明確なゴールを設定することが、後の効果検証において非常に重要です。

4-3. STEP3:対象者を選定し、本人および上長にリスキリングの必要性を共有する

リスキリングの目的とゴールが定まったら、自ずとリスキリング対象者も定まるはずです。対象社員の範囲は以下のように決めることが多いです。


▼リスキリング対象者の決め方の例

  • 若手社員や管理職など特定の階層を対象にする
  • 総務部やマーケティング部など特定の部署を対象にする
  • 他の職種や業務に興味がある社員を社内公募する
  • 企業側で選抜をする

例えば、カスタマーサポート部門の人数を減らし、営業推進部門やインサイドセールス部門を強化したいという戦略を描いている場合は、カスタマーサポート部門に所属する社員がリスキリングの対象者です。新しい部署を立ち上げたい場合は、社内での公募や選抜といった方法もあります。

リスキリングを成功させるには、対象者と上長のマインドセットが鍵となります。具体的には、「対象となる社員本人が学習の必要性を理解し、主体的にキャリア開発に取り組んでもらうこと」、そして「上長である管理職を巻き込み、当事者意識を持ってもらうこと」が不可欠です。

以下のようにコミュニケーションを取りましょう。

本人への説明例⚫︎スキルを学んでほしい理由、会社が期待する役割、習得後のキャリアパスを伝える
⚫︎「これはリストラではなく、あなたの市場価値を高めるための重要なキャリア開発の機会である」というポジティブなメッセージを伝える
管理職への協力依頼例⚫︎部下のリスキリングがチームの成果にどう貢献するのかを説明する
⚫︎1on1での進捗確認、学習したスキルを試す機会の提供(新業務へのアサイン)、実践に対するフィードバックといった、「育成責任者」としての具体的な役割を担ってもらうよう依頼する

4-4. STEP4:eラーニングのコンテンツを組み込んだカリキュラムを設計し、実施する

リスキリングの目的と対象者を定めたら、習得させたいスキルに合わせて最適な学習コンテンツを組み合わせ、カリキュラムを設計します。

学習を進める順番は、以下を意識して組み立てるのがおすすめです。


  • 全体像から詳細へ:分野の全体像や前提となる知識を学んだうえで、具体的な手法(How)を学ぶ
  • 基礎から応用へ:基本的な知識を学んだうえで、基礎を活かした高度で専門的な内容に進む
  • 理論から実践へ:汎用的な知識を具体的なケースや自社の業務プロセスとつなげて理解する

<具体例:マーケティング部門におけるDX推進カリキュラムのイメージ>

段階学習内容実践課題
STEP1:マーケティング全体像⚫︎マーケティングの基礎と全体像
⚫︎データドリブンとは何か?
⚫︎カスタマージャーニーの考え方
自社のペルソナとカスタマージャーニーを再定義してみる
STEP2:データ分析の基礎⚫︎統計学の初歩
⚫︎データ活用のための思考法
⚫︎Excelを使ったデータ集計・分析
自社の販売データを使い、顧客セグメント別の売上を分析・報告する
STEP3:デジタルマーケティング手法⚫︎SEOの基礎とコンテンツ作成
⚫︎Web広告の運用方法
⚫︎BIツールでのデータ可視化
競合サイトのSEO状況を分析する
少額でWeb広告を出稿し、効果をレポートする
STEP4:施策立案と効果測定⚫︎マーケティングオートメーション(MA)
⚫︎アクセス解析と改善提案
⚫︎プロジェクトマネジメント基礎
習得したスキルを使い、自社製品のWebマーケティング改善企画を立案・発表する

このようなカリキュラムをゼロから設計するのは、多大な労力を要します。そのため、身に付けたいスキルに合わせて、体系的なラーニングパスが予め用意されているeラーニングサービスを選ぶのがおすすめです。

当社のeラーニングサービス「グロービス学び放題」では、30年以上にわたり社会人教育に向き合ってきたノウハウを活かし、専門チームがカリキュラムを設計しています。

テーマ別に複数のコースを組み合わせた「ラーニングパス」も100以上ご用意しており、目的に合ったコースがすぐに見つかります。目指すべきゴールから逆算した最適な学習ルートが設計されているため、導入直後から、効果的な学びをスタートさせることが可能です。

「グロービス学び放題」のコンテンツとラーニングパスを詳しく見る

4-5. STEP5:対象社員の主体的な学習を支援する

リスキリングの進め方を設計した後の段階で、成功を左右する最も重要なポイントは、「対象となる社員が実際に学習を進めてくれるかどうか」です。

リスキリングにおける学習は成果がすぐに見えづらく、個人単位での取り組みとなるため、日常業務で忙しい社員に後回しにされてしまうケースが非常に多いです。ただ事務的にアナウンスするだけではなく、学習へと意識を向かわせる仕掛けをしましょう。

<社員の学習を支援する具体的な施策例>

支援の観点具体的な施策例
学習時間の確保⚫︎毎朝○分など定例で学習に充てる時間を設定し、業務時間としてみなす
⚫︎上長に協力を仰ぎ、対象社員の業務量の調整をしてもらう
モチベーションの維持⚫︎上長が1on1で学習の進捗を確認し、期待を伝える
⚫︎受講が進んでいない社員にリマインドメールを送信する
⚫︎学習への取り組みを人事評価項目に組み込む
⚫︎学習者同士のオンラインコミュニティを作り、進捗報告や質疑応答ができる場を設ける
⚫︎学習成果を社内広報で共有し、ロールモデルを可視化する
学習内容の定着⚫︎学習成果を測るアセスメント・テストを実施する
⚫︎学習内容の振り返りレポートを提出してもらう
⚫︎社内で勉強会や共有会を実施する

特にモチベーションの維持を目的とした働きかけは、社員自身の学習意欲を高める「内発的動機付け」と、やらなければならない状況を作り出す「外発的動機付け」をバランス良く組み合わせて実施するのがおすすめです。

4-6. STEP6:学習データを可視化し、学びの成果を人事評価や人材配置に反映させる

最後に、社員がリスキリングの取り組みを通して習得した知識やスキルを、新たな業務や別職種への転換といった新しい環境で活用してもらうところまで設計しましょう。

具体的には、学習の成果をデータで可視化するステップと、その情報をもとに人事評価や人材配置を実施できるよう制度の中に組み込むステップがあります。

4-6-1. 学習データを可視化する方法

多くのeラーニングサービスには学習管理機能が搭載されており、社員一人ひとりの修了コースや視聴時間などの受講履歴をデータとして確認できます。

他の研修も実施している場合は、LMS(学習管理システム)やタレントマネジメントシステムと連携し、総合的に管理を行うのがおすすめです。

▼関連コラム:
【人事必見】研修工数半減×定着率アップ|研修管理システムで育成を可視化

4-6-2. 人事評価や人材配置への反映方法

以下を参考に、習得した知識やスキルを人事評価や人材配置にどのように反映させるか設計しておきましょう。

方法具体例
人事評価への反映⚫︎昇進・昇格の要件の一つとして、スキルの習得や資格取得を加える
⚫︎スキルや資格に対する手当として報酬に反映させる
人材配置⚫︎知識やスキルを活かせる別の部署に異動させる
⚫︎現在の部署と別の部署を兼任させる
⚫︎知識やスキルを活かせるグループ会社に出向させる
新たな業務へのアサイン⚫︎知識やスキルを活かせる新しいプロジェクトにアサインする

5. リスキリングの成果を最大化するにはeラーニング学習に加えて「アウトプットの機会」が必要

企業がリスキリングに取り組むときには、「対象社員が新しく習得したスキルを業務に反映させ、外部環境の変化にも適応できる体制をつくりたい」という目的があるケースが多いかと思います。これを実現するためには、eラーニング学習によるインプットに加え、実践を見据えたアウトプットの機会を設けることを強く推奨します。

動画学習ツールであるeラーニングは、幅広い知識を効率良くインプットしたい場面に適している一方で、「わかる」ようになっただけでは、得た知識を自分のものとして定着させ、実務で活用することは難しいからです。

テーマに関する講義の受講や、学習コンテンツの視聴などのインプットをしただけでは、知識の定着率は僅か5~20%に留まると言われています。ディスカッションやプレゼンテーション、ロールプレイングなど、アウトプットを交えて主体的に学ぶ「アクティブ・ラーニング」を通して、学びを定着させることが必要なのです。

eラーニング学習と組み合わせて実施しやすいアウトプットの事例をいくつかご紹介します。


【アウトプットの例】

  • 学習内容や振り返りを言語化したレポートの提出を課す
  • eラーニングの学習内容をもとにした社内勉強会を実施する
  • ワークショップやディスカッション形式で行う研修を組み合わせて実施する
  • 学習者同士のオンラインコミュニティを作り、進捗報告や質疑応答ができる場を設ける

グロービスでは、企業様のご状況を踏まえて、eラーニングの効果を最大化する適切なアウトプット施策をご提案します。

6. eラーニングを活用して社員のリスキリングを推進した企業の事例

実際に社員のリスキリングにeラーニングを活用された企業様の事例をご紹介します。自社の課題と照らし合わせて、ぜひ参考にしてください。

6-1. 八千代エンジニヤリング株式会社様

八千代エンジニヤリング様は、事業と社内業務改革の両面でDXを推進するため、「グロービス学び放題」を活用して全社員のデジタルスキル向上に取り組みました。

課題
⚫︎ビジネス環境の変化に対応し、既存事業の変革、新規事業や新たな領域への進出が必要で、そのために必要なマインドセットやスキルを習得する必要があった
⚫︎技術管理本部が主導し、ゼロから「リスキリング実施計画」を作成する必要があった
導入の決め手⚫︎デジタルスキル標準に準拠したDXアセスメント機能があり、社員の学習状況を定量的に把握できる
⚫︎DXアセスメントの活用により、個々のスキルに合わせた学習プランを提供できる
⚫︎学習しやすいコース設計、コンテンツが短時間で区切られており、スキマ時間を活用しやすい
活用方法⚫︎スキルレベルを4段階に分け、まずは全社員をLevel1からLevel2にするため、社員のスキルに合わせた学習を促進
⚫︎社員はDXアセスメントを受験し、その結果に基づいてリコメンドされたコンテンツを学習
⚫︎DXアセスメントの正答率目標を設定し、目標を明確化
⚫︎目標達成率を可視化し、達成状況をSlackで全社共有
⚫︎BI基礎講座といった自社で作成したe-ラーニングコンテンツも組み合わせることで、デジタル技術の知識取得に留まらず活用を促進
成果⚫︎DXアセスメント受験率99%、正答率70%達成者86%を実現
⚫︎社員のデジタルスキルが向上し、DXに対する意識が高まる

▼インタビュー全文:
DXアセスメントを活用し、全社リスキリングを推進。八千代エンジニヤリングのDX人財育成

6-2. 株式会社八十二銀行様

八十二銀行様は「グロービス学び放題」を導入することによって、これまでの単線型キャリアパスから脱却し、社員一人ひとりの多様なキャリアビジョンに合わせて自分に必要な学びを選択できる環境を整えました。

課題⚫︎従来は「全員が支店長を目指す」という単線的なキャリアパスであったため、職員の多様化する価値観やキャリアビジョンに対応できていなかった
⚫︎管理職がマネジメント手法を体系的に学ぶ機会が少なく、マネジメントスタイルの属人化やトップダウン型の管理に陥るケースが見られた
⚫︎集合研修が中心だったため、全国の拠点にいる職員が、時間や場所を問わずに学べる環境が整っていなかった
導入の決め手⚫︎全国のどの拠点にいても、オンラインで均質な学習機会を提供できる点
⚫︎「組織マネジメント」や「リーダーシップ」など、学びたいテーマに沿って推奨動画がまとめられており、誰もが手軽に学びを始められる点
⚫︎動画が数分単位に区切られており、スキマ時間に視聴しやすいことや、他のサービスと比較してUIが優れていると感じられた点
活用方法⚫︎マネジメントコース在籍者約900名全員にアカウントを付与
⚫︎希望者はコンテンツを視聴し、月1回のレポート提出を義務づけることで、インプットとアウトプットを習慣化
成果定性的な成果:
⚫︎学びを業務に活かす視点が生まれ、「マーケティングの知識で取引先の商品価値を判断する目利き力が高まった」といった具体的な実践事例が報告されるようになった
⚫︎「自分の経験をメンバーに伝え、サポートしていきたい」という、マネージャーとしての意識の高まりが見られた
定量的な成果:
⚫︎マネジメント層における月の全体平均視聴時間は約5時間

▼インタビュー全文:
マネジメント層のリスキリングと新人育成に「GLOBIS 学び放題」を活用 VUCA時代にふさわしい組織へ

6-3. 味の素株式会社様

味の素様は、中期経営計画で描いたビジョンの実現に向けて、オペレーションや事業モデルなど様々な変革を推進できるデジタルDX人財を育成するため、「グロービス学び放題」による学習を要件に組み込んだ認定プログラムをスタートしました。

課題⚫︎中期経営計画で掲げる「食と健康の課題解決企業」への変革にはDXが不可欠であり、その推進のためには全社員のITリテラシーを高めることが必須であった
⚫︎DX推進にあたり、「ビジネスに精通しITリテラシー(基礎)を具備し、これらを駆使して簡単なものは解決、変革できる人財」、また、システム開発者やデータサイエンティストといった専門家と同じ立場で話ができる人財の育成を目指していた
⚫︎会社からの働きかけだけで社員の能力を引き出すことには限界があると感じていた
導入の決め手⚫︎約30年前のグロービス設立頃から付き合いがあり、多くの社員が受講生として講義を受けてきた背景があった
⚫︎以前のDX推進部長が「グロービス学び放題」を高く評価しており、その経緯からビジネスDX人財の育成にも活用された
⚫︎人事部でも昇格者研修などで既に活用実績があった
活用方法認定プログラムへの組み込み:
⚫︎「ビジネスDX人財育成コース(初級)」の認定プログラムにおいて、クリティカル・シンキングや定量分析などを学ぶためのインプットツールとして活用
⚫︎約40コース、20時間程度の視聴を認定要件とした
学習意欲を刺激する受講促進:
⚫︎月1回程度、人気講座の案内などを実施
⚫︎学習が進んでいない人への働きかけではなく、既に学んでいる社員の学習意欲に働きかけることに重きを置き、「必須講座を視聴済みの社員が他にどのような動画で学んでいるか」といった情報を発信した
成果定量的な成果:
⚫︎予想を大幅に超える応募があり、累計2,346名(単体従業員の約73.7%)が受講
⚫︎コース修了率は9割を超えた
⚫︎受講者アンケートにおける「グロービス学び放題」への満足度は94.3%
定性的な成果:
⚫︎アンケートにて、「ビジネスプランニングにも役立っている」「エンジニアなどの専門家のマネジメントに必要な知識を得られた」といった声があった

▼インタビュー全文:
ビジネスDX人財育成からコミュニティ作りへ。DXを加速し「食と健康の課題解決企業」を目指す

7. 体系的な学びを通してリスキリングを推進できるeラーニングサービス「グロービス学び放題」

グロービスでは、30年を越える社会人教育の実績から得た知見に基づき、高品質な学びを得られるeラーニングサービス「グロービス学び放題」を提供しています。
リスキリングでのご活用においては、特に以下のようなメリットがあります。



7-1. 各分野の学ぶべき内容が体系的に整理されており、効率良くリスキリングを進められる

「グロービス学び放題」のコンテンツは、MBAの教材開発を手掛ける専門チームによって開発され、学習理論に基づき体系的に学べるよう設計されています。
レベルに合わせて段階的に知識を身に付けられるように組み立てられているので、新しい知識を身に付ける際にも、どのコースからどの順番で取り組めば良いのかが分かりやすく、迷わずに学びを進められます。

階層や目的に応じて、複数のコースを組み合わせた「ラーニングパス」というパッケージプログラムを100以上用意しています。
「ラーニングパス」をご活用いただくと、人事担当者の皆様がゼロから学習プログラムを組み立てる必要がなく、利用開始後すぐに研修を実施できます。

▶︎「グロービス学び放題」のコンテンツとラーニングパスを詳しく見る

7-2. 全16カテゴリを用意しており、幅広い職種や階層のリスキリングに対応できる

「グロービス学び放題」は、「経営戦略」「組織・マネジメント」「会計・財務」「マーケティング」などの普遍的なビジネス知識から、「AI」「DX」などの最新テーマまで、全16カテゴリ・4,100コース以上(2025年現在)の豊富なコンテンツを用意しています。

解決したい自社課題や、職種・階層ごとに強化したいテーマに合わせて、幅広い社員のリスキリングに活用できます。

7-3. DX推進、AI活用などの最新テーマにも対応、環境の変化に合わせて学びをアップデートし続けられる

リスキリングが企業の取り組むべき課題として挙がる背景としては、ビジネス環境の変化に伴い、従来の在り方を変革する必要に迫られているケースが多いです。

「グロービス学び放題」は、MBAのカリキュラムに基づく普遍的なビジネススキルだけでなく、テクノロジーの進化に対応した最新の技術に関する学びも提供しています。
「グロービス学び放題」を学びのプラットフォームとして土台に据えることで、時代の変化が加速する中でも、社員の学びをアップデートし続けられる安心感があります。

例:経済産業省が定義する「デジタルスキル標準」に準拠した学習コンテンツ

例:業務におけるAIツール活用や、AI活用を前提とした組織のマネジメントや戦略思考を学ぶコンテンツ

▶︎マネジメントと現場、2つの視点で進めるAI活用「AI BUSINESS SHIFT」「AI WORK SHIFT」シリーズ

8. まとめ

企業のリスキリング推進においてeラーニングは有効なツールですが、単に導入するだけで戦略の設計をしていないと、思うように学習成果を得られないケースが多いです。

eラーニングを活用したリスキリングを成功させるには、以下の3点を押さえておきましょう。


  • ツールを導入する前に、リスキリングの目的を明確にし、ゴールを設定する
  • 対象となる社員のモチベーションを引き出し、学習を進めやすい環境を整える
  • eラーニングでインプットした知識をアウトプットする機会を設ける

なお、リスキリングの目的とゴールによっては、eラーニングよりも他の手段のほうが適しているケースもあります。自社の状況においてeラーニングが適した選択肢なのか見極めてから、導入を進めましょう。

「できればeラーニングを活用してリスキリングを進めたいが、成果が出せるかどうか不安」「リスキリング施策に効果的にeラーニングを組み込む具体的な方法が知りたい」という方は、ぜひグロービスにご相談ください。

法人向けグロービス学び放題は初期費用無料。
最短6ヶ月、1ID「11,550円(税込)」から導入いただけます。

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執筆者プロフィール
加藤 真穂 Kato Maho名古屋大学文学部卒業後、不動産系資産運用会社に入社し、秘書・法務業務を経験。
その後Webマーケターに転身し、株式会社ミツモアにてオウンドメディアのSEO業務に従事。キーワード調査、コンテンツの企画・制作やディレクション、ライターチームのマネジメントなどに携わる。
2025年にグロービスへ入社し、現在はBtoBマーケティング部門にて、Webコンテンツの企画・制作、Webサイトの分析・改善などを担う。

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